SSS 9.1レッスン パラリンピアンに負けるな!今使える機能を最大に活かす泳ぎを
オリンピックが終わったのも束の間。
パラリンピックが始まりましたね。
SSSの会員さんたちは、みなさん、富田くんや木村くんたちを、テレビの前で応援していることと思います。
木村くんは2013年くらいからかな…。
富田くんはその後くらいから、SSSに通ってきましたね。
彼らを迎え入れてくれた、SSSの会員の皆さんにはとても感謝しています。
プールの中でぶつかりそうになったりしたことも1度や2度のことではなかったことでしょう。
でも、うちにはその昔、坂もっちゃんという(坂本くん)、片腕の肘先欠損の障がいを持ったスイマーも通っていたのをご記憶の方いますでしょうか?
彼も、アジアユースか何かで日本代表まで入ったスイマーです。
今や公務員として働いているようですが、たまに障がい者の大会で元気な顔を見ることがあります。
私自身が障がい者スイマーと一緒に泳いだのは、高校2年の時が最初だったかな?
四国に長距離の選手で、結構高校ランクでも上の方にいた方だと記憶しています。
その選手、確か片足の脹脛の筋肉がなかったんです。
スタート台に登るときに、確かケンケンで登ってた記憶がありますが…。
その選手と1500でデッドヒートになったことがあって、最後に私がキックを打って勝ったかどうか記憶がないのですが、キックが使えない選手に対してキックを使って勝負してしまったことで、すごく悔しい思いをした記憶だけは、鮮明に覚えています。
そこから20年以上経って、坂もっちゃんがSSSに入りました。
まだ中学生だったと記憶していますが、そのときに社長と一緒に「受け入れることに対してかなり深く検討」を重ねての決断でした。
坂もっちゃんは練習したくてたまらないけれど、障害を理由にどこに行っても断られている、という状況からフリースタイルを頼って来られたのでした。
彼の就職に伴う退会と入れ替わる感じで木村くんを迎え入れ、
その後富田くんも迎え入れ、
村上くん(S14)が入り、その後は聴覚障害のスイマーの齋藤くんも入ってきたりと、なかなかインクルーシヴな練習会になりましたが、
「練習環境がない」彼らを、いつも迎え入れてきたからこそ今がありますし、
実はフリースタイルとパラスイマーとのつきあいは、20年近くに及んでいます。
視覚がない(あるいは低い)
聴覚がない(聞こえていても私の指示を聞いていない人も含め。笑)
身体のある一部が短い
動きのフィードバックができない(脳の司令のパスが通常通りできない)
・・・などなど、認定される障がいももちろんです。
しかし、マスターズになると、
「いうこと効かなくなる身体」
との戦いも、私はこれらに含まれると考えています。
なので、泳ぎを指導する立場としては、「その人の文脈」を重視した泳ぎ作りをサポートする必要があると考えているわけです。
もう一つ、よく今回の実況解説で「マニュアルがない」という表現がなされますが、私はそうは考えていません。
障がいの有無とか関係なく、動物であれ、船であれ、水中や水面上を推進する物体にかかる力や、推進力を得るための原則は、同じで、マニュアルは存在します。
例えば・・・
「水の抵抗は推進力の二乗(近年は3乗に近いと言われています)」などの流体的原理原則や、
「力学の原則」(ニュートン、ほんとこの法則残してくれてありがとう!)がちゃんとあって、
そこは、未来永劫崩れることはありません。
(流体の研究は今後も進化するので、二乗が3乗になったりはしますが…)
人間の身体の動きや、動作を学習するプロセスなども、ちゃんと原理原則が存在します。
関節の可動域だって、たまに極端な変態例(笑)はありますが、肩関節だってどこからどこまで動くとかはほぼ決まっていますし、広背筋がどこからついていてどこで止まっているかとか、身体のつくりが異なる(例えばパラの選手など)は別としても、普通は変わりません。
動作を学習する過程も、S14やブラインドではやや異なる手法を使う必要がありますが、難易度が変わるだけです。
まあ、S14はだいぶ特殊ですし、諦めねばならないことも多々ありますが(笑)、ならそれで別の良い点を引き出して、速く泳ぐようにしていけば良いと思います。
これらがある程度理解できていないと、「マニュアルがない」と言いたくなってしまうんですよね。
その方が「それ以上考えなくて良い」というゴールに達するのが早いので。
でも私たち指導者は、そこで思考停止したら、スイマーのパフォーマンスを最大化させることができないんですよね。
そこからが、コーチの腕の見せ所なんですよ。
一方で「正解がない」という表現は、なるほど確かにそうです。私もそう思います。
しかし「(その人の特徴から)やっちゃいけない動き」はあります。
「やっちゃいけない動き」を色々と試していると、そのうち「こっちの方が進む」となりますよね。
そう考えると、実は「正解がない」のではなく、「正解は複数ある」わけです。
この表現の方が、流体を扱う水泳というスポーツの特徴を、よく捉えていると思いますね。
なんてことを念頭におきながら、今回のレッスンでは、キックについて
「どうやったら進むキックが身につくか?」を考えていただきたいわけです。
もちろん、その人の足の形や柔軟性に見合った動作を身につけるには?という面からです。
なので、私はいつも通り、現場では「こうしてみたら」的な提案はしますが、あまりティーチング(指示)はしません(笑)。
遠慮なく、思い切り試行錯誤してください。
明日は、昼夜異なりますので、昼メニューから説明します。
1 アップはいつも通りですが、パラの解説でもあった「足であぐらをかいて、片手をグーにして片手を肘を曲げて」(鈴木孝選手の泳ぎの表現)みたいなのを試してみても結構です(笑)。
2 ここは、回数が減っていますので、動きの意識を強く持って、この8回以内で今日の目標とする上肢の感覚をインプットしてきます。
3 最初の2Rは、2のセッションの感覚重視で泳ぎます。3R目は、強度を上げてみます。「プチ耐乳酸」みたいな感じです。レースがしばらくないかもしれませんが、自身にとって良いフォームで、且つ筋の疲労耐性はある程度整えておきましょう。
4 ここは今回初めて行う「壁キックループ」のセッションです。
ここは、ハードに続けるのではなく、「よりスムーズに前に進む蹴り方」を学習することが目的です。
壁キックでは、とにかく足と脚の使い方を駆使して、少しでも壁を持つ手に圧力が強くかかる蹴り方を模索してください。
その後、ボードキックで実際に進み、25m到着したらまた壁キックで動きを模索する…これを、100m終わって壁キックまで、延々とループするという100m3本です(笑)。
5 では、その動きを今度はフリー、IM(板なし)、自身の得意種目(あるいは試したい種目)で、スピードに乗せて行います。今回でうまく会得できなくても、「ああ、こういう方向性でトライし続ければ良いのかな?」という感じになるまで到達できたら、御の字です。
6 では、先週行ったプルアップ。ポジティブ・ネガティブはお任せで、3回広背筋の稼働を意識したら、ゆっくり泳ぎます。
7 ここは1発勝負のMAX PULL。テンポを上げたときに力強さを加えて、ストローク長が短くならないように。現段階での腕での最大パワーを測るつもりで行きましょう。
夜の部は、1と2までは一緒です。
3 で先週のプルアップを、前半6本はネガティブ、後半6本は、床を少し蹴っても良いので素早く行い、背中の筋の使い方を学習させてから、プルに入ります。2のシミュレーションプルで水の当たり方を、3のプルアップで筋の使い方を強く意識してから、目標とする動作を学習していきます。
2R目は、プルの高強度インターバルです。ここは、昼の部のラスト50と同じで、繰り返しがあるので、上肢のパワーの持続力を高めるアプローチをします。
4と5 昼と同じですので、前述を参考にしてください。
6 回数は選択制です(1回しか変わりませんが。笑)最初の2、3のセッションの感触や筋への指令(マインドーマッスルコネクション)を思い出しながら、ゆったりと泳ぎつつ、7での全力泳に備えます。
7 ダイブからですが、水面をキックしてそのままスイムで12.5を一気に泳ぎます。スイムのMAX+2秒以内を目標値にしましょう!
さあ、キックのループがどうなるか?今から楽しみです。
あ、脚をたくさん使うので、心臓もしっかり整えておいてくださいね(笑)。